共有名義の土地において持分権者ができること・できないこと
共有名義の土地において持分権者ができること・できないことは、以下のように民法249条〜252条に規定されています。
- 使用:共有物の全部を持分に応じて使用できる(民法249条)
- 変更・処分:共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要になる(民法251条)
- 管理:持分の価格の過半数の同意があれば管理行為が行なえる(民法252条
- 保存行為:各共有者が単独で行なえる(民法252条但し書き)
引用元:民法 | e-Gov法令検索
具体的には以下のようになります。
全体売却(処分行為)するには名義人全員の同意が無いとできない
共有している土地全体を売却することは処分行為になりますから、売却するには共有者全員の同意が必要です。
(共有物の変更)
第二百五十一条各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。引用元:民法251条
借地借家法が適用される土地の賃貸借契約も処分行為になるため、共有者全員の同意が必要です。
借地借家法とは、土地の賃貸借の存続期間や建物の賃貸借の更新などについて定めた法律です。
この法律によって建物所有目的の借地権の存続期間は30年と定められているほか、賃貸借期間が限定されて更新されない定期借地権などが規定されています。
例えば、ある企業に土地を貸し出す際に10年以上の期間を定めた定期借地契約なら、期間満了時には更新されずに、確実に所有地が返還されるのです。
自分の持分は単独でいつでも売却できる
自分の持分は自分の財産ですから自分が思うままに処分できます。
自分の持分処分は、先述した民法が規定する共有物の処分に該当しませんので、単独判断での売却が可能です。
貸地(管理行為)は共有持分の過半数の同意が無いとできない
共有の土地を賃貸することは原則的には管理行為ですから、持分価格の過半数の同意があればできます。
管理行為であれば共有者がABの二人いてAの持分1/3、Bの持分が2/3だった場合には、持分の過半数をもっているBだけの判断で土地を賃貸することができることになります。
ただし、平成14年11月25日東京地裁のように「借地借家法の適用を受ける賃貸借契約では原則として共有者全員の同意が必要」だとする判決がでていますから、賃貸借契約をする場合には注意しましょう。
現在のところ、以下の賃貸借契約では過半数の同意でよいとされています。
- 借地借家法の適用を受けない賃貸借契約
- 短期賃貸借の範囲を超えない賃貸借契約
(共有物の管理)
第二百五十二条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。引用元:民法252条
(短期賃貸借)
第六百二条
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月引用元:民法602条
持分価格の過半数とは、持分価格は通常ならば共有者全員が同一になるので、持分割合の過半数と同じ意味になります。
すなわちABCが各8分の1ずつ、Dが残りの8分の5を所有していればD単独で管理行為が行なえます。
造成(改良行為)するには共有者全員の同意が無いとできない
農地を宅地に変更するような場合には、土地の造成によって土地の形状や利用価値は大きく変わります。
そのため土地の造成は変更(=処分)行為となりますから共有者全員の同意が必要な行為です。
引用元:民法251条
不法占拠者を追い出す(保存行為)などは名義人単独でできる
普段の土地の雑草の草取り、共有している建物の修理や、不法に占拠している者を退去させる行為など共有物の価値を維持する行為は保存行為として各共有者が単独で行なえます。
引用元:民法252条但し書き
自分の駐車場(使用行為)などは名義人単独でできる
自分の持分に相当する面積までなら自分が利用する駐車場として使用できます。
ただし持分相当の面積だとしても土地の入口を占拠して土地への出入りを妨げるような使用はできません。
また、共有者の一人が単独で共有の土地や建物を使用して、自分の持分利用を妨げられる場合があります。
その際には、単独で利用している人に対して妨害排除あるいは不当利得、損害賠償などを請求することができます。
(共有物の使用)
第二百四十九条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。引用元:民法249条
共有名義の土地を売却する方法
共有名義の土地を売却する方法には3つあります。
土地全体を売却して代金を持分比率で分ける
土地全体を売却すれば売買代金を共有者全員で分け合うことができます。
分け合う比率は共有持分の割合になりますから、5人で共有している土地を1,000万円で売却すれば一人あたり200万円ずつに分配して完了です。
- 権利書(登記済証または登記識別情報)
- 印鑑証明書(有効期間3か月)
- 実印(申請書に捺印)
司法書士に依頼する場合は、本人確認書類を求められるので「運転免許証」や「マイナンバーカード」など、顔写真がある公的証明書の準備が必要になります。
また、登記記録上の住所氏名と現在の住所氏名が異なる場合は、同一人であることを証明するために住民票の写しや戸籍謄本が必要です。
くわえて、住所氏名が変わったことを登記しなければなりません。
登記済証あるいは登記識別情報を通常「権利書」とよんでいます。
登記がオンラインによって申請できるようにするための方策として、平成17年頃から順次準備が整った法務局から、登記済証から登記識別情報通知書を交付するように手続きが変わりました。
登記識別情報は筆ごと人ごとに交付されますが、登記済証は申請ごとに交付されていました。
登記済証または登記識別情報は権利の取得の登記をした時に法務局から交付されます。
具体的には売買や相続による所有権移転登記、あるいは合筆の登記の際に交付されるもので、住所や氏名の変更、分筆登記の際には交付されません。
「写し」とあっても役場が発行したもののコピーでよい意味ではありません。
「住民票」は役場が登録管理している住民の住所などの記録をさしその記録の写しとして発行されるため証明書そのものを「住民票の写し」といっています。
占有したい共有者に買取ってもらう
他の共有者の中に「占有して利用したい」という人がいれば、自分の持分を買取ってもらう方法もあります。
それには、下記2点に留意してください。
- 適性な価格を把握する
- 相場に乖離すると贈与になる
一方で購入した方は土地を自由に使うことができるようになりますから、占有したい共有者に買取ってもらうのは両者にメリットがある方法です。
第三者に持分を買取ってもらうのは難しいですが、他の共有者であれば共有物の事情はよく知っていますから占有を希望する他の共有者に買取ってもらうことができれば最善の方法です。
他の共有者に買取ってもらう場合にも、土地全体を売却するときと同じ書類が必要になります。
なお、自分の持分を売却する際は、当事者以外の同意は不要です。
持分割合によって分筆して売却する
土地を分筆登記して共有者それぞれの単独で所有する土地にしたうえで売却することもできます。
土地を分筆すると分筆後の形状や向きによって価値も異なりますから、どのように分筆するか共有者同士で話し合いがまとまらないことがあります。
南北で二つの土地にするような場合に北と南で価値が異なるためです。
また分筆することで道路がなくなるような場合や、不整形地ができてしまう場合は分筆する方法は使えません。
分筆をするには土地家屋調査士に相談しましょう。
土地家屋調査士に相談すれば土地家屋調査士が法務局で公図や測量図、登記事項証明書など取得したうえで現地調査をしてくれます。
しかし、相談する前に自分で法務局からこれらの書類を取り寄せておけば、分筆後の様子を予め自分でも想定することができますから相談がスムーズにすすみます。
分筆の流れ
分筆登記しただけでは分筆前の登記事項が分筆後の土地に転写移記されるだけですから単独所有の土地にはなりません。
分筆をして分筆後に単独名義の土地にするには次のような手順になります。
1.分筆登記
面積が200㎡ある土地を150㎡の甲土地と50㎡の乙土地に分筆すると、甲土地と乙土地の2つの登記記録ができます。
甲土地と乙土地はもとが同じ土地ですから、面積以外は同じ登記記録になります。
分筆後の乙土地の登記記録を作るときに甲土地の登記記録の中で現在も効力がある登記事項をそのまま新しい土地の登記記録に転写するからです。
すなわち、A・B共有の土地を分筆することによってそのままA・Bそれぞれが単独で所有する甲土地と乙土地ができあがるわけではありません。
分筆前甲土地の所有者がA持分2/3、B持分1/3となっていれば分筆されて新しくできた乙土地の所有者も同じくA持分2/3、B持分1/3のままです。
2.共有物分割による持分移転登記
そのため、分筆後にお互いの共有持分を相互に移転しあう手続きをしてはじめて単独名義の土地になります。
今回の場合、甲土地をA単独にするにはBの持分1/3をAに移転し、逆に乙土地についてはB単独にするためにAからBにAの持分2/3を移転します。
分筆登記をした後も分筆前の権利書が必要になります。
分筆後に共有物分割をして単独所有になっても登記済証の場合は他の共有者と以前の権利書を持ちあうことになりますから注意しましょう。
また共有持分に対して抵当権などが設定してある土地であれば、抵当権などの登記も転写移記されます。
そのため、自分のために抵当権を設定しているときは、相手方の土地になる抵当権は抹消し、こちらの土地に共有物分割によって新しく取得した持分に対して抵当権が及ぶようにする手続きが必要です。
分筆にかかる費用
分筆にかかる費用は
- 土地の形状
- 隣接地の数
- 分筆後の数
によって異なりますが、 境界線が確定している場合は、30万円程度の費用が土地家屋調査士への報酬として必要になります。
くわえて、共有物分割によって持分をやり取りする移転登記の費用として、固定資産評価額の4/1000(条件によっては20/1000)の税率で計算した登録免許税を納付します。
なお、共有物分割による持分移転については不動産取得税はかかりません。
この際に司法書士に依頼すれば、報酬として8万円程度必要となるでしょう。
他の共有者と会わずに進める共有地を売却する方法
共有している土地を売却するには、前に解説したように共有者全員が同意しなければできません。
売却するためには、売買契約をし売買代金と引き換えに物件の引き渡しを行ないますが、このようなときには共有者全員が立会して行なうのが原則です。
しかし、共有者の中には「遠方に住んでいる」「どうしても日程調整ができない」などの都合や、他の共有者とは「会いたくない」など特別の事情がある場合もあるでしょう。
このような場合には他の共有者と会わずに売却を進めるために次のような方法をとることができます。
売買手続きを代理人(親族や弁護士など)に委任する
代理人になることに資格の制限はありませんから売買の手続きを信頼できる親族や知人、弁護士などに代理人としてまかせることもできます。
代理人にまかせるときには後日のトラブルを防ぐために代理人にできることの範囲を明確にしておきましょう。
例えば、希望する売買代金の額(妥協できる最低ライン)や費用負担の限度などをはっきりと書面にすることが大事です。
また、売買交渉にあたって経過を緊密に報告をすることを約束してもらいます。
交渉の相手方に代理できる権限があることを示すために代理人宛の委任状を発行しておきましょう。
委任状の様式に定めはありませんが少なくとも次の事項を記載しておきます。
- 委任した日付
- 委任者と代理人の住所・氏名
- 委任事項(できるだけ詳細に)
- 代理させる目的物の表示
売買契約が済み、購入者へ所有権移転登記をするときには、司法書士などに依頼すればこのような事情があっても司法書士などを代理人として手続きを進めることができます。
不動産会社へ他共有者からの売却同意の取り付けを依頼する「持ち回り契約」
不動産会社へ他の共有者への売却同意の取り付けを依頼することができます。
売却したいと思っても他の共有者が土地の売却に同意しなければ売却できません。
共有者の中に売却に積極的でない方や反対している方がいる場合には、不動産会社にそれらの方の説得を依頼することも検討しましょう。
不動産会社から売却する理由や具体的な売却金額など売却するメリットを提示しながら説得してもらうと、そのような方も売却に前向きになる可能性があります。
売買契約をするときには、売主と買主が一堂に会して署名捺印することが原則ですが、当事者が順次契約書を持ちまわして署名捺印をしていくこともあります。
遠方に住んでいる場合や、他の共有者と直接会いたくない場合には不動産会社に相談してみましょう。
自分の持分を持分専門の買取業者に売却する
自分が持っている持分を持分専門の買取業者に売却する方法なら、まったく他の共有者と相談する必要がありません。
相続したので親族間で共有しているようなときには、中にはどうしても折り合いが悪くて顔を合わせたくない場合もあります。
遺産分割協議でもめているような場合には、直接会うのはできるだけ避けたいものです。
離婚協議中の夫婦間で共有している場合にも、直接会うのは苦痛を感じることがあります。
解説したように、土地全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけを売却するのは自由にできます。
自分がもっている持分だけを売却する方法なら、いやな思いをしないで他の共有者と会うことなく売却を完結できますから、他の方法によるのが難しい時には検討しましょう。
共有名義の土地を高く売る方法
共有名義の土地を高く売却する方法を、土地全体で売る場合と自分が持っている持分だけを売却する場合とに分けて解説します。
いずれの方法でも売却するためには、借入金やローンのために設定してある抵当権を抹消できることが必要ですから注意してください。
全体売却で高く売る方法3選
全体売却で高く売るために以下の点に留意して行ないます。
売却を不動産会社に仲介を依頼して売りにだすと不動産会社が広告などの販売活動をしてくれ、広い範囲で購入希望者を募ってくれますから高く売却できる可能性があります。
仲介の依頼方法には3つの種類があり、それぞれに長短がありますから不動産会社に相談しながらすすめましょう。
3つの方法では、仲介契約の自由度、不動産情報の掲載、販売活動の報告頻度などに違いがあります。
依頼前に相場を確認する
売却するには、まず売却物件がいくらぐらいの価値があるのかを自分自身で把握しておく必要があります。
そのため、一括査定サイトなどを利用してなるべく多くの査定情報を集めましょう。
相場を知るためには不動産会社のホームページで似たような物件の販売状況を検索し、新聞広告や折り込みチラシなどを注意してみると参考になります。
ただし、これらの価格は売却希望価格ですから実際にその価格で売れたのかはわかりません。
国土交通省が公表している下記土地総合情報システムであれば実際の売却価格がわかりますから近くの不動産を検索してみましょう。
引用元:土地総合情報システム
査定を依頼した際に、担当者の中には実績が欲しいためだけに高額な査定を提示する担当者もいるので注意してください。
あまりにも高額すぎれば、なかなか売却できないでいたずらに期間が経過し、結局他の査定よりも安く売却することになってしまうおそれもあります。
金額より会社と営業マンで選ぶ
一括査定など複数の査定を依頼することで、いろいろな不動産会社の担当者と面識ができます。
実は不動産の査定は、売主が不動産会社を査定するよい機会でもあるのです。
不動産の売却は長期間になり、複雑な問題もありますから、担当者の対応をみて判断し、誠実で信頼できる担当者に販売活動を依頼しましょう。
過去の利用履歴を明確にしておく
過去にガソリンスタンドや工場の敷地であれば土壌汚染が心配されますし、水田であれば地盤が軟弱な可能性があります。
また家が建っていた場合にも土中に浄化槽が残っているおそれもあります。
このように土地には歴史があり、その過程にどのようなことがおこりえたかを買主は心配しています。
利用履歴がはっきりとしていれば買主は安心しますから、より高額に売却しやすくなるのです。
売主としては、撤去していない地中埋設物がないかを調査し、契約書に明記しておかなければ契約不適合責任を問われるおそれもありますから売主にとっても土地の利用履歴は重大な注意点になります。
2020年4月に民法が改正され今までの瑕疵担保責任が契約不適合責任へと変わりました。
売却したものが売買契約の内容に適合しているかを問われることになり、瑕疵担保責任よりも売主の責任が加重されていますから注意しましょう。
持分売却で高く売る方法3選
自分がもっている持分だけを高く売却するために特に以下の3つに注目しましょう。
実際に利用している共有者の有無を明確にして売る
売却物件の使用状況は大切な情報です。
実際に売却物件を利用している共有者がいれば他の共有者の同意を得たうえで利用しており、占有権や使用収益権の既得権をもっている可能性が高いため購入者の利用が制限されるおそれがあります。
また、賃借権などが設定されていないか、売却物件の利用状況を正確に把握して売却しましょう。
土地の各共有者の持分を明確にして売る
前に解説したように共有物の使用や処分について共有者の持分割合は重大な意味をもちます。
登記記録には持分が記載されていますが、持分の譲渡が行なわれているのに登記がされていないことはないか、相続が発生していて持分権利者に変動がないかを事前に確認しましょう。
共有者の連絡先を明確にして売る
持分買取業者が持分を購入した後に他の共有者に連絡をすることがあります。
そのため連絡先や方法について正確な情報を購入者に引き継ぐことが大切です。
共有者の中に行方不明の方がいて連絡がとれなければその旨もきちんと説明をして売却することが必要です。
自分の持分を売却する際の専門会社を利用するメリット・デメリット
自分の持分を売却する際に買取専門会社を利用する場合のメリット・デメリットを紹介します。
買取業者を利用するメリット
自分の持分を買取業者に売却すると以下のようなメリットがあります。
早期に買取ってもらえてすぐに現金化できる
持分買取を専門にしている業者であれば持分売却に至る事情をよくわかっていますから、売却交渉も早く進んで、早く現金化できます。
確実に買取ってもらえ仲介手数料がかからない
直接持分買取業者が買取りますから、不動産会社が仲介に入らないため、仲介手数料がかかりません。
不動産会社に仲介を依頼すると売買価格に3%+6万円が仲介手数料としてかかりますからその分不要でお得です。
労力がかからず売却後は全て任せられる
持分買取業者に売却すると売買契約から決済まで買取業者に任せておけば進めてくれますから手間がかかりません。
そのうえ、売却後も一切業者が面倒をみますから売主は売却して売買代金を手に入れれば共有状態からきれいに脱退することができます。
また、直接業者が買取りますから、公告などがされないため近所や他の共有者に知れることもなく内密に売却できることもメリットです。
買取業者を利用するデメリット
買取業者に売却することはメリットだけではなく、デメリットもあります。
買取金額が安くなることが多い
共有持分の買取価格の相場は半額程度と言われています。
市場価格1,000万円の土地の持分2分の1を売却する場合、持分の買取価格は
(1,000万円×1/2×1/2=250万円)
250万円程度になってしまいます。
持分買取の場合、買取り額が相場価格よりも安くなる理由は以下のような要因があります。
- 足元をみられる
- 持分買取の市場が狭い
- 持分買取後の商品化にコストがかかる
信頼できない業者であれば、売主が売却をあせっていると勘ぐり、足元をみられて相場よりも安く買いたたかれてしまうおそれがあることです。
そのため先のように自分自身で物件の相場を調べてどのくらいで売れるものなのかを把握しておくことが大切です。
また、持分売買の購入希望者は少ないために市場が狭いことから買取金額は安くなりがちです。
買取業者は持分を買取った後に一般市場に売れるように商品化する必要があります。
商品化する方法として
- 他の共有者に売却する
- 他の共有者の持分を買取る
- 取得した持分について賃貸借契約をする
- 共有物分割訴訟をして単独名義にする
などがあります。
このように商品化するためには費用がかかりますから、その費用を見込んでの買取金額になるからです。
共有地の自分の持分を売却するとかかる税金
共有持分を売却して利益が出れば税金がかかります。
売却後に確定申告をする
売却利益が出れば確定申告をしなければなりませんから申告を忘れないように注意しましょう。
確定申告は売却した日の翌年の2月16日から3月15日の期間内に住所地の税務署で行ないます。
確定申告の期間はとても込み合いますから早めに済ませておきましょう。
譲渡所得税がかかる場合もある
不動産譲渡所得税は、支出した費用よりも高額で売却して利益がでた場合に、その利益に対して課税されます。
取得費として次の費用を経費に算入できます。
- 売却した不動産の購入代金、建築代金
- 仲介手数料
- 設備費・改良費
- 登録免許税などの登記費用
- 不動産取得税
- 特別土地保有税(取得分)
- 印紙税(売買契約書に貼付した収入印紙)
ただし、建物については建築代金や購入代金そのものではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額になることに気をつけましょう。
購入した時の売買契約書が紛失しており売買代金が証明できなければ取得費は5%と判断されてしまいます。
所有期間によって短期(5年以下)と長期(5年超し)にわかれて、下記の表のように譲渡所得税や住民税の税率が異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | |
短期譲渡 | 5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡 | 5年超過 | 15% | 5% |
このほか所得税に対して2.1%の割合で令和19年12月31日まで復興特別所得税が課税されます。
なお、住宅用の財産であれば3,000万円の特別控除などの優遇税制がありますから住宅を売却する場合には適用されないか検討しましょう。
引用元:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
住民税もかかる場合がある
住民税は市区町村役場から課税される税金ですが、確定申告をすれば住民税の申告も終わりですから、別に申告をする必要はありません。
住民税の税率は上記の表を参考にしてください。
共有持分の買取依頼から売却までの流れ
共有持分の買取を依頼してから売買代金を受け取るまでは次のような手順で進んでいきます。
その他この章では以下について解説します。
買取業者へ問い合わせ・事情を説明して査定依頼
買取業者に連絡をして買取ってもらえるか問い合わせます。
この際には他の共有者との関係や売却に至った事情など、なるべく詳しく正直に説明することが大切です。
買取業者が条件確認や物件調査
買取業者が売主の話を聞いて物件を調査したうえで、売買代金などの条件を打ち合わせます。
査定が実施され提示
買取価格の決定
売主と買取業者との間で条件や売買代金などを交渉して話し合いが整えば売買契約を締結します。
契約の締結
売買契約を締結する時に、売買代金の支払方法、支払場所などの打ち合わせを行ないます。
決済
一般の売買ではローンの手当など資金の準備や引っ越しなどの準備が必要なため、1ヶ月程度の準備期間をおくことが多いですが、専門の買取業者なら契約後すぐに決済まですすむので早くて安心です。
買取時に必要となる書類
売主は所有権移転登記に必要な書類や、以前確定測量をしている土地なら確定測量をしたときの資料などを準備してあげると買主は安心です。
売却にかかる費用
持分売却には以下のような費用がかかります。
- 売買契約書に貼る収入印紙
- 住所の変更や抵当権抹消登記の費用
- 不動産譲渡所得税や住民税
・売買契約書に貼る収入印紙
不動産の売買契約書には所定の額の収入印紙を貼り付けて使えないように印紙に消印をしておく必要があります。
もしも貼り忘れがわかれば所定の額の3倍の額を納めなければなりません。
・住所氏名の変更や抵当権抹消登記の費用
登記記録上の住所氏名と印鑑証明書の住所氏名が一致しなければ所有権(持分)移転登記ができませんから、所有権移転登記の前提として登記名義人の住所(あるいは氏名)の変更登記が必要です。
また借入に伴う抵当権が設定されていれば売却時に抹消することが原則です。
いずれの登記も法務局に登記のための登録免許税を納めなければなりません。
登録免許税額は1筆1,000円かかります。
司法書士に依頼すると司法書士報酬を支払うことになりますが、1件1万円~2万円支払うことになります。
問い合わせから現金化までの期間
一般的には、問い合わせから1週間~1ヵ月程度で現金化できるでしょう。
さらに条件によっては即日買取が可能な場合もあります。
まとめ
共有している土地を売却するためには、共有者全員の協力が必要になり、ときには共有者同士で話し合いができないようなこともあります。
共有者間で仲が悪くなってしまい、共有関係を解消するためには複雑で面倒な手続きが必要になり、仲が悪ければ話し合いもうまくすすみません。
そのようなときには、自分の共有持分だけを売却して共有関係から離脱することも可能です。
共有持分を安心して少しでも高く売却するには、信頼できる買取業者に相談しましょう。
共有名義の土地のことで、お悩みやご心配なことがあるなら、「弁護士や司法書士、税理士」など士業の専門家と連携している弊社に無料相談してみましょう。